2015年07月15日

海自P−1に搭載されているF7エンジンとよくある誤解


F7エンジン全般

海自の最新鋭哨戒機P−1に搭載されている
F7エンジンとはどういうものなのでしょうか

F7はIHI(昔の石川播磨重工)が開発
したエンジンで

F7は最初からP−1のエンジンとして
開発が進められました。

これはP−1のエンジンとして他に適切な
ものが無かったためとされています。

海自哨戒機P−1<div></div>

1998年から研究が開始され

2010年に量産型の設計が完了し量産が
開始されています。

2013年5月、P−1の試験中

急降下時、4つのエンジンが全部止まると
いうトラブルに見舞われましたが

まもなくエンジンの燃料噴射制御ソフトの
不具合と分かり、改修されP−1の飛行が
再開されています。

特徴としては

離陸時推力 6.1t/13,500lbs
(1基あたり)

一般的な中型旅客機用エンジンと同程度

省燃費で、基地問題となる騒音も低く抑え
られています。

超低空を飛行する海自P−1

また、P−1は数十メートルという超低空の
海面ぎりぎりを飛行することから

塩害やバードストライクの被害を極限する
ために

チタン、ニッケル、アルミニウム合金が
使われており

エンジンの内側には騒音を減衰するパネル
も使われています。

注:P−3のエンジンT56よりも
5〜10db低いとされています。

P−1のF7エンジン内側
海自P−1のF7エンジンの内側


P−1のF7エンジン内側の吸音パネル

P−1のF7エンジン内側の吸音パネル

ところで

P−1のエンジンについては一部、誤った
解釈や、風評が出回っているようです。


「エンジンが4発な理由」

P−1はもともとの要求性能が4発エンジン
ということで開発されています。

そもそこれは搭乗員の要望であり

P−1の特殊な飛行形態から、ある意味
当然の要求でもあります。

P−1の開発が始まった当時、北朝鮮の
工作船が話題になっていました。

北朝鮮工作船に積まれていた武器

工作船には携SAMの他にロケット弾や
対空機関砲が装備されていました。

赤外線ホーミング方式の携SAMは、熱を
放出しているどれか1つのエンジンめがけて
飛んできますから

爆発力や、P−1の機体形状を考えると

よほど当たり所が悪くない限り、飛行を継続
できる可能性は大きいです。


ロケット弾や対空機関砲の場合も当たり所に
よりますが

残ったエンジンが1つなのと3つなのと
どちらが安心(安全)かということです。


それからP−1は海面上数十メートルの
低空を長時間飛行することもあります。

そんな時にエンジン1発が突然停止したら
どうなるか

飛行機の高度計

高度1万メートルほどの高空を飛行する
民間機なら数十メートル高度が低下しても
なんの問題にもなりませんが

超低空でエンジンが止まったときに、急いで
正常なエンジンのスロットルを全開にしても

燃料がエンジン内に噴射されて、出力が
上がるまでには数秒のタイムラグがあります。

海自哨戒機P−1のコックピット

その間にどの程度高度が低下するか

2発なら50%の出力の低下

4発なら1発のエンジンが止まっても
出力の低下は25%です。

どちらが安心(安全)かということになります。


現在海自の主力哨戒機のP−3Cの前の
主力哨戒機P−2J

2発のプロペラエンジンの外側にさらに
各1基の補助用ジェットエンジンが付いて
いました。

離着陸以外の高空を飛行するときには
このジェットエンジンを停止していましたが

潜水艦を追跡するときなどで、低空に降りる
ときはこの補助ジェットエンジンを起動して

緊急時に備えていたと言います。

海自哨戒機P−2J
海自P−2J


あるいは、現在主力のP−3Cも、現場で
飛行する際には1、2発のエンジンを止めて
燃費の節約していますが、

超低空に降りる場合には、やはり全部の
エンジンを再始動し

4発の状態で飛行するそうです。

ということでP−1は最初から要求性能が
4発エンジンなのです。


この件についてはかって、防衛庁長官だった
石破さんが

信頼性の高い外国製のエンジンの方が故障
する可能性は少ないし、整備性や経済面
からも上ではないかともめた

という話が伝わっていますが、このあたりの
説明がうまくなされていなかったのでは
ないかと思います。


「国内産業育成のために国産エンジンにした」

そういう意図がなかったとは言えませんが

現実的に、海上哨戒機に適切なジェット
エンジンが無かったというのが実際の所だと
思います。

まず、戦闘機用の大出力ジェットエンジン
では出力が大きすぎる上に燃費が悪く

洋上を長時間飛行するという哨戒機用の
エンジンにはなり得ません


となると、民間機用のジェットエンジンですが

民間機は、離着陸を除けば1万メートル
ほどの高空を、一定の経済速力で飛行する
ために特化したエンジンを搭載しています。

ですから、P−1のように哨戒海域への
進出時には高空を高速で、

哨戒海域では低高度を低速で飛行するなんて
ことは民間機用のエンジンでは考慮外です。

そして一番問題になるのが超低空を飛行する
際の塩害


海自P−3Cが基地に着陸したあと機体とエンジンを水洗しているところ
基地に着陸後エンジンや機体を水洗するP−3C


これって結構大問題で

お隣の韓国の揚陸艦「独島:ドクト」

満載18,800tの空母型の大型艦で
就役以来10年近くになるのにまともに
運用されていない、いわく付きの軍艦ですが

韓国海軍に塩害対策を施したヘリがないために

いまだにヘリが搭載されていません

韓国の揚陸艦独島


ちょっと話がそれてしまいましたが

海上を低空飛行する、飛行機にとって塩の
問題は結構大きいようです。

ちなみに民間機を流用した米海軍のP−8は
エンジンが2発ということもあって

結局低空には降りない運用方法で使われて
いると言うことです。
(無人機と併用する予定)

米海軍哨戒機P−8
米海軍P−8


でもって、ジェットエンジンを使用した
新鋭の洋上哨戒機を開発しているのは

ロシアや中国を別にすれば日米だけ

しかも米国でさえ民間機用のエンジンを
そのまま使っていて、低空には降りれない
のですから

外国製で、洋上哨戒機用の適当なエンジンを
探しても

そもそもあるわけが無いですね。(^_^)v


「2発で飛べる大出力の推進力を持った
エンジンを国産できる能力が無かった」

太平洋戦争中、工業力の低かった日本は、
米国に比べ低い出力の戦闘機用エンジン
しか作れず

戦争初期を除き、速力などの性能や

頑丈な機体や防弾板などでも劣勢を余儀
なくされた記憶や

ゼロ戦
ゼロ戦


戦後長らく航空機の製造を禁止されたこと
などから

日本は、航空機用の高性能なジェット
エンジンは作れない

というようなイメージがすり込まれている
ようですが


自動車や船舶用のエンジンなどをみても
日本の工業力は世界でも有数であるのは
間違いなく

要求があればそれなりのエンジンが作れない
ということは無いと思います。

P−1のF7エンジン
P−1のF7エンジン


大出力エンジンが作れなかったのかどうかは
別として

そもそも、P−1は4発が前提ですし

燃費と、低空飛行性能に優れたエンジン
という要求性能ですから

現状のF7エンジンで全く問題ないというか

もし外国が洋上哨戒機を開発しようとすれば
F7エンジンは、強力な選択候補に上がる
のではないでしょうか


「現場に到着したら1〜2発エンジンを
止めて飛行する(燃費向上)」

P−1用のF7エンジンは、エンジンを
停止してもファンが回って抵抗が増えること

空中で再起動できないリスクを考え

哨戒海域でエンジンを止めるという運用は
しないということです。



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posted by 如月実 at 13:48 | TrackBack(0) | 防衛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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